シリーズ1 住宅産業のコンサルタント鵜澤泰功が語る
「「インフレ時代の賢い家選び」
 −金利変動リスクを個人が取る覚悟はあるか−
(2007年8月11日 中日新聞)
1.低金利の弊害と今後の金利
現在の預金金利の実質ゼロという状態はどう考えても異常です。年金記録問題が騒がれていますが、たとえこの問題が解決しても、私たちは年金だけでは、豊かな老後を迎えることは難しいでしょう。しかし預金金利ゼロの状態を解決すれば、私たちは新たな富を生み出すことができます。
 日本人が所有する個人金融資産は、約1500兆円もあります。これを年間3%程度の金利で運用できれば、年間45兆円もの金利収入が得られることになります。しかし実際には、現在の預金金利は0.3〜0.5%程度であり、4〜5兆円程度の金利収入しか得ていない状況なのです。
 少しでも早く預金金利ゼロの状態から脱出しない限り、日本国民の幸せ、特に今後労働収入が減少し、預金を取り崩して生活していかなくてはならない団塊の世代の幸せな生活は訪れないことになります。
 右下図のように先進諸国と比較しても、日本の政策金利の低さは異常ともいえる状況にあります。世界的な金利上昇トレンドの中で、日本だけがこのままの低金利を維持できることはとても考えられない状況です
2.短期固定金利型ローンの落とし穴
このように世界的な高金利時代にあって、日本における金利上昇は、すでに住宅ローンを組んでいる人にとっては、耳の痛い話です。特に目先の金利を重視して、短期固定金利選択型や変動金利型などを選んで住宅購入をしてしまった人たちは、とても深刻な問題を抱えてしまっているといえます。
 下図のようにわずか1%の違いが、数百万円の返済額の違いを生み出すことから、毎月のローン返済がぎりぎりという人たちにとっては、目先の金利ができるだけ低い商品を選びたくなるのも無理からぬことです。
 しかしこれは、非常に大きなリスクを消費者が持ってしまうことを覚悟する必要があります。金利上昇傾向期には、それだけでは終わりません。実は金利上昇期には、自己破産の件数も増えるのです。特に前述した短期固定金利選択型や変動金利型を選んだ人たちは、もろに金利上昇の影響を受けるので、自己破産に至る人も少なくありません。 社会的、経済的な状況から見て、超低金利時代がそういつまでも続くわけはありません。過去の金利から見ても、今後は金利が上昇するのです。さらに毎年、自己破産に陥る人の2割程度は、住宅ローンを抱えている人たちであるといわれているので、他人事ではありません。
 超低金利時期に、低金利に釣られて契約してしまったのはもう仕方ないとして、金利が上昇している時に、ただ傍観しているだけでは、あまりに危険だと言わざるを得ません。金利上昇期に短期固定金選択型や変動金利型を選択した人たちは、早急に借り換えなどの対策が必要だと思います。
3.米国から学ぶ金利変動リスク回避
 金利上昇トレンドに入り始めた今、住宅を建てようとする人に是非知っていただきたいのが、住宅ローンを証券化し、それを投資家が購入することで、市場が良い家を決めていく「モーゲージローン」という仕組みです。日本ではこの5年ほどで「モーゲージローン」を専門に取り扱う金融機関が登場してきました。
 アメリカでは住宅ローン金利が高く、大きく変動する状況のため、金利が長期で固定された住宅ローンを借りるのが一般的です。一方で住宅ローン債権を証券化することで資金調達する形態の「モーゲージバンク」からお金を借りる人が増加しています。
 一般の住宅ローンとモーゲージローンの大きな違いは二つあります。一つは貸付債権を投資家に売却することで資金を得る仕組みであること。これによって、金利変動リスクを投資家が負ってくれることが可能となり、超長期(30年以上)の固定金利ローンの実現が可能となったのです。もう一つは、融資の担保として住宅そのもの担保価値(再販価値、流通価値、利用価値)を重視した融資基準であることです。このことで投資家にローン債権を売る際、住宅が耐震強度偽装の物件や欠陥住宅、あるいは建築基準法違反の住宅であった場合、債権として価値がなく、再販ができないために投資家に買ってもらえません。つまり、借りる住宅ローンの先に市場(投資家)が存在することで、良い家の定義を市場が決める仕組みが出来るのです。
 モーゲージローンは、日本における良い家の定義を根本的に変える可能性を持った住宅金融の仕組みだと考えています。これによって「住宅は金融商品」になるのです。今後、数年間で土地が値上がりし、金利が上がり、原油高騰や円安から住宅資材が値上がりしています。住宅取得の環境としては、ここ数年が一次取得者層にとっては家を買うチャンスかもしれません。その際、家族構成やライフスタイルがどんどん変わるにもかかわらず、目先のプランにこだわりすぎて、流行や奇抜なデザインにこだわって、再販しにくい住宅を建てることは避けるべきです。本質的な「良い家とは何か」ということを問うてみてほしいのです。そして、できるだけ長い期間金利を固定したモーゲージローンを設定して借りることで、金利変動リスクは個人でなく、市場が負ってくれることになります。またそれによって、建てる住宅が金融商品となって、今後流通していくことになり、住宅が公共のものになっていくのです。
4.金利上昇と住宅会社の経営不安拡大への対応
 金利上昇の影響を受けるのは、何も住宅ローンだけではありません。個人以上に企業に大きなインパクトがあります。金利が上昇することで、企業の資金繰りは確実に悪化していきます。
 そこでこれから住宅を建てようとする皆さんが十分に注意する必要があるのは、請負契約を交わす住宅会社の倒産リスクが非常に大きくなってきていることです。万が一、建築途中で住宅会社が倒産などの理由で請負契約を完全に実行できなくなってしまった場合は、それまで支払った建築費用は捨て金になってしまうこともあります。
 更に無事住宅が完成したとしても、その後住宅会社が行う義務のある10年間の保証(瑕疵保証)やアフターサービスが受けられなくなるリスクがあります。これらのリスクを回避するポイントとしては上図をご覧下さい。もちろん、住宅会社の人間性や対応等総合的に判断することが重要ではありますが、信頼できる住宅会社を見分ける視点として多少なりとも参考にして頂ければ幸いです。
 最後に住宅ローンは住宅よりもずっと大きな買い物です。住宅ローンの選び方一つで総返済額は住宅価格の2倍近くにもなります。読者の皆様には是非、今後何十年にわたっても後悔しない住宅ローン選びをして頂きたいと思います。
買い手のリスクを回避するポイント
㈰住宅の建設請負会社の完成役務保証制度が整備されているか確認が必要(住宅がなんらかの理由で完成しなかった場合、請負会社に変わって完成までの工事を確実に行える制度)がなされているかどうか。
 ●役務保証でなく金銭保証のみの制度は、確実な完成は保証されていないためかなりのリスクは残っていると考えるべき。
㈪建築費用を工事の進行度合い以上に支払わないような契約書の支払い条件となっているかどうか。
 ●経営内容が悪い住宅会社ほど資金繰りのために工事の出来高以上の費用を先にもらおうとする傾向がある。
㈫変動金利での住宅ローンを使うことを強く勧めてくる住宅会社には注意が必要。
 ●超長期固定の住宅ローンと比べて、変動金利型の方が銀行もリスクがなく、利益も大きい。そのため住宅会社が変動や中・短期固定型のローンを進める時は、顧客のことより、少しでも高い住宅を売りたいという企業側の都合を優先したいか、または銀行に対して弱みを持った会社であることが多い。


鵜澤 泰功 うざわ やすのりさん
 1995年生まれ。建築cadシステム会社を経て、ハウスメーカーを中心にしたコンサルティング業「ビルダーズシステム研究所」を設立。市場調査や住宅商品開発。保証制度の構築コンサルティングなどを行う。住宅ローン債権を証券化する「モーゲージローン」を扱う「日本モーゲージサービス」代表。
著書に「住宅は金融商品である」(新建新聞社刊)。
企画・製作/中日新聞岐阜支社広告部

住まい'S DEPO.が提供する住まいづくりのワンストップサービスは、平成18年度国土交通省「地域における中小・中堅建設業の新分野進出定着推進モデル構築支援事業」として選定されています。